人工がん抗原を用いて樹状細胞を司令官にする方法


がんの目印を樹状細胞へ覚えさせるためには、手術などで取り出した患者さんのがん組織が必要になります。
しかし、既に手術を終えて、がん組織を摘出・廃棄済みの場合や、全身状態が悪くてがん組織を採取できない場合があり、自己がん組織を用意するのは容易ではありません。

そこで考え出されたのが、多くのがん種で高頻度に発現しているがんの目印を人工的に合成し(人工がん抗原)、それを樹状細胞に覚えこませる方法です。そして、この人工がん抗原の中で注目を集めているのが、「WT1ペプチド」です。
このがん抗原は、多くの固形または血液がんに発現しているため、樹状細胞が認識すべきがんの目印として好都合です。
現在までに、樹状細胞ワクチン療法に使用できる人工がん抗原は数多く開発されてきましたが、それらの中でもWT1ペプチドは有用ながん抗原として高い評価を受けています。

大阪大学特許のWT1ペプチドと他医療機関のペプチベータPepTivator® WT1を使った樹状細胞ワクチンとの違い。


当院では、テラ社が独占ライセンスを取得している大阪大学特許のWT1ペプチドの使用が可能です。
これら6種類の特許取得されたWT1ペプチドを患者様固有のHLAに合わせて選択しています。
この特許を回避してペプチベータPepTivator® WT1という市販の研究用ペプチドプールを抗原に用いた他施設での治療とは治療効果を含め、全く異なるものです。
大阪大学のWT1ペプチドはHLAクラス1用では9アミノ酸、HLAクラスII用では16アミノ酸の長さで各HLA分子のgroove(溝)にしっかり結合するようにアンカーモチーフを計算して作製された特許取得のアミノ酸配列です(*)。
これらのWT1ペプチド抗原から患者様のHLAにあったものを選択しており、日本人においてWT1ペプチド(HLAクラスI用)は99%程度、WT1ペプチド(HLAクラスII用)は89%程度の患者様に適合したものが選択できます。
テラ社技術を使用しない樹状細胞ワクチン療法を行うほぼすべての他医療機関では、大阪大学特許のWT1ペプチドの代用品として独ミルテニー社のPepTivator®WT1(ペプチベータWT1)という市販の研究用抗原を使用しています。
このPepTivator®WT1(ペプチベータWT1)はWT1蛋白の全長を網羅するように15アミノ酸長ごとに合成したアミノ酸のプールですが、HLAクラスI分子のgroove(溝)に適合する9アミノ酸長ではなく、大阪大学特許のWT1ペプチドをつかった樹状細胞ワクチンとは臨床効果も全く異なるものです。
大阪大学では、この特許取得WT1ペプチド自体を単独でペプチドワクチンとして使う臨床試験を行っており、今まで肺がん、乳がん、腎がん、脳腫瘍(glioma)、造血器腫瘍について有効例を報告しています。

(*)大阪大学では、ヒトWT1タンパク(449個のアミノ酸配列)の中から、HLAクラスI分子への結合に必要なアンカーモチーフをもった9個のアミノ酸(9-mer WT1ペプチド)を複数選択し合成しました。これら合成された9-mer WT1ペプチドとヒト末梢血リンパ球を用いて、WT1特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導能を測定しました。こうして449個のアミノ酸配列の中からWT1特異的細胞傷害性T細胞(CTL)誘導能の高いことが証明された配列のみ、9個のアミノ酸配列(9-mer WT1ペプチド)が特許として登録されています。また、大阪大学では同様にHLAクラスII分子への結合に必要なアンカーモチーフをもった16個のアミノ酸(16-mer WT1ペプチド)も発見し特許取得されています。これら特許取得のWT1ペプチドを使用できる免疫治療は、テラ社の技術供与による樹状細胞ワクチンのみです。

当院で使用するがん抗原(以下を組合せて樹状細胞に取り込ませます。)


1)WT1ペプチド(HLAクラスI用 阪大特許9mer):ほとんどの癌で発現が確認(GIST、肉腫、脳腫瘍など含む)、腫瘍血管にも豊富
2)WT1ペプチド(HLAクラスII用 阪大特許16mer):ほとんどの癌で発現が確認(GIST、肉腫、脳腫瘍など含む)
3)MUC-1:腺癌、悪性中皮腫、胸腺腫瘍、肺大細胞癌、CA19-9、CA15-3蛋白の一部でもあります。
4)CEAペプチド:CEA高値例、胸腺腫瘍
5)Her2ペプチド:HER2陽性腫瘍(乳がん、胃がん、大腸がん等のHer2陽性例)
6)PSA蛋白:前立腺癌
7)AFP蛋白:肝細胞癌
8)GPC3蛋白:肝細胞癌、悪性黒色腫、卵巣がん明細胞腺癌
9)自己がん組織(新鮮凍結組織からtumor lysateを作製)※
(※自己がん組織は術中に組織を分けていただく必要があり、外科の先生の協力が不可欠でなかなか作製が困難ですが、著効例も存在しますので常に考慮に値します。)

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