“がん免疫療法の歴史” ~”非特異的” から”特異的” 治療へ~


これまでのがん免疫療法では、とにかく体全体の免疫を高めようと、「活性化リンパ球療法」や「NK細胞療法」「BRM療法」などが考案されましたが、いずれも進行がんに対する単独での有効性は証明されませんでした。これらは、いわゆる「非特異的」免疫療法です。21世紀に入り、「正常細胞に影響なく、がん細胞だけを攻撃するかという”特異的”治療の試みが、ようやく医療の現場で実現可能になってきました。この進歩は免疫療法の分野でも同様に起こり、からだ全体の免疫の活性化しかできなかった時代から、がん細胞に、より特異的に作用する免疫を活性化する「特異的がん免疫療法」へと進化していきました(下図)。

コラム:免疫療法開発の歴史
免疫療法の歴史は、1900年頃にアメリカ人医師コーリーが「患者さんが感染症などにかかって高熱を出すと、がんが縮小する」という関連性に気が付いたことに始まります。 その後コーリーは、細菌からワクチンをつくって患者さんに接種しました。 このコーリーワクチンが最初の免疫療法と言われています。
1960~70年頃には、体全体の免疫力を高める成分が次々と発見され「免疫賦活剤」と呼ばれる医薬品が認可されるようになりました。細菌の成分であるピシバニール、キノコ類から抽出したシゾフィラン、レンチナン、クレスチンなどが挙げられます。免疫賦活剤の適用は限定的ですが、現在もがん治療などに利用されています。よく耳にする丸山ワクチンも免疫賦活剤で、免疫療法の一つです。また、一般的には結核の予防接種ワクチンとして知られる「BCG」も一部のがん治療に用いられています。
1980年代になると、免疫細胞を活性化させる働きのあるインターフェロンやインターロイキンなどを用いた「サイトカイン療法」や、患者さんからリンパ球を採取し、NK細胞を体外で増殖・活性化させて体内に戻す「NK細胞療法」などの免疫細胞療法が行われるようになりました。また、敵(抗原)の目印にだけ反応して攻撃する抗原抗体反応を利用したリツキシマブのような抗体薬も登場し、いまでは標準治療となっています。
1990年代になると、樹状細胞ワクチン療法やがんペプチドワクチン治療といった、ワクチン療法が注目されるようになりました。 患者さんの体内に敵(抗原)の目印を教え込まれた樹状細胞を注入するのが樹状細胞ワクチン療法、抗原そのものを注入するのががんペプチドワクチン治療です。

免疫療法の現状
研究を重ねる中で、免疫療法の効果を限定的にしている「免疫抑制の作用」についてわかってきました。 免疫には体内の正常な細胞を攻撃しないようにブレーキ機能が備わっていますが、がんはこのブレーキ機能を使って、 免疫に本来の働きをできないようにしてしまうのです。免疫療法で免疫細胞を活性化させようとしても、免疫抑制に邪魔されてしまうのです。そこで、この免疫抑制を解除する作用を持つ免疫療法が新たに登場してきています。 免疫抑制の働きを解除することは、従来の免疫療法にとっても大切な鍵を握っていると言えます。

今後の免疫療法
近年、免疫抑制を解除する医薬品などの研究が行われるようになり、今後もこの傾向が続くと考えられます。 また、抗がん剤投与や放射線照射といった標準治療と免疫療法との組み合わせや、他の免疫療法との組み合わせによる治療法の研究も進んでいます。そして免疫療法にとって重要な、その治療法が効果を発揮できる患者さんであるか否かを見極める「バイオマーカー」の開発にも力が注がれています。患者さんにとって身近な選択肢となるよう、また確立された治療法となるよう、免疫療法の研究は、継続しています。

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